社会問題への関心

高校入試における時事問題

 高校入試において出題される時事問題というと、科目としてはまず社会が思い浮かぶと思いますが、実はそれだけではありません。都立高校の推薦試験での集団討論や作文・小論文、また私立高校での面接などにおいても、時事問題に関連した知識が問われる機会が多くあります。しかも、これらの試験(集団討論や面接など)においては、単なる個々のニュースの知識ではなく、その知識を前提とした個人の意見や洞察が必要とされる傾向があります。

集団討論のテーマ例

 では、実際どのような設問があるのでしょうか。都立高校の推薦入試で行われる集団討論では、いろいろなタイプのテーマがあります。

 《ゴミは自分で持ち帰る習慣をもつべきだから、教室にゴミ箱を置かないようにしようと思う、という意見に賛成ですか。反対ですか。(H31日本橋)》

 例えば、上記のような日常生活に即したテーマならば受検生も考えやすいのですが、そういう設問ばかりではありません。
 以下に、過去に実施された討論テーマをいくつか挙げてみます。(例は全てH31年度入試で出題されたもの。括弧は出題された高校名)

《急速に発展するAIの技術とともに生活していく中で、将来AIだけに任せておくことはできないと思うものにはどのようなことがあるか。(三田)》

《日本には、諸外国を魅了する有形・無形の文化財や、地域に根付いた祭りや踊りに参加する伝統があります。このような日本文化を維持・継承・発展させるために、今、あなたたちは何ができるでしょうか。(白鴎)》

《「防災」について、どのような災害に対し、どのような備えが必要か、学んできたことを踏まえて、高校生としてできることにはどのようなことがあるか。(忍岡)》

《海洋汚染につながるプラスチックごみを削減しようとする取組が世界中で検討されています。日本でも、多くのスーパーがレジ袋を有料にし、外食チェーン店の中にはプラスチック製ストローを廃止したところもあります。しかし、一人当たりの使い捨てプラスチック使用量が世界で二番目に多いのが現状です。今後、さらにプラスチックごみを削減するにはどのような取組が必要だと考えますか。皆さんで話し合ってください。(青山)》

《SDGs(エスディージーズ:Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)とは、世界が抱える課題を解決し、持続可能な世界を実現するために世界各国が合意した17の目標です。(※受検生に17の目標が提示される)いま、日本が最優先すべき目標は何か。グループで話し合い一つの目標に絞りなさい。また、それを実現させるために必要である具体的な提案をしなさい。(板橋)》

《これからの社会では、現金を扱わない「キャッシュレス化」が一層進み、現金は使用することができず、電子マネーなどでなければ支払いができない、という店舗が増えてくることが予想されます。あなたはこのような店舗が増えていくことに賛成ですか、反対ですか。(江北)》

《成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案が国会で可決されました。「18歳成人」の利点と問題点について、具体的に話し合ってください。(小岩)》


心がけるべきこと

 実際に出題されたテーマを見ると、大人にしてもけっこう難しい話題が取り上げられていることが分かると思います。こういう問題に対処するためには、入試直前の付け焼刃ではなく、常日頃から社会問題に興味を持って、積極的にアンテナを広げておく必要があります。
 そのために心掛けておくべきポイントがいくつかあると思います。
 まず、新聞やニュースを見る習慣をつけることです。(ただし、ネットニュースでは個人の好みに合わせたニュースが配信されるので、情報に偏りが生じやすいのが問題ですが)。
 または、世の中の動向を知る方法の一つとして、本屋さんに行って平積みされている本を調べてみるというのも有効です。お店の目立つところに表紙が見えるように平積みされている本は、売れ筋商品や流行性・話題性に富んだものであることが多いからです。
 そして、分からないことがあったらすぐに調べることが大切です。これはネットで検索すれば大抵のことは調べられますが、正確さや信憑性を高めるためには、書籍の活用も欠かせません。 小中学校の理科や社会で習う内容は、世の中の出来事や問題と関連性があるものがたくさんあります。ただ漫然と丸暗記するのではなく、習ったことを元にして理解できるニュースが少しずつ増えていく、という感覚を大切にしながら勉強すると学習がより深まると思います。